2026/06/24

【価値創造委員会】第17回定時総会基調講演・価値向上セミナー 開催報告

日 時 2026年6月17日(水)

場 所 神田明神ホール

参加者 現地会場192名、リモート参加者20名(うち非会員4名)

 

「伝統」を「持続可能な産業」に再設計する

〜生産性の視点から問う、業界の進むべき道〜

 

【講師プロフィール】

デービッド・アトキンソン氏

株式会社小西美術工藝社代表取締役社長。オックスフォード大学(日本学専攻)卒業後、大手証券会社のアナリストとして日本の金融問題に鋭く警鐘を鳴らし、辣腕を振るう。2011年より、創業三百年を超える国宝・重要文化財修復の老舗企業の経営トップに就任。伝統技術の守り手としての実践と、独自の経済データ分析に基づき、中小企業の労働生産性向上や観光立国、伝統産業の価値再設計に関する提言を続けている。

 

誰もが引き込まれた90分間

去る2026年6月17日、神田明神ホールにて開催された日本石材産業協会総会において、価値創造委員会の企画による特別講演会が実現しました。

講師にお迎えしたのは、文化財修復の第一線で日本の伝統技術を守り続けるとともに、独自の経済分析から中小企業の生産性向上を提唱しているデービッド・アトキンソン氏です。

講演では、日本社会が直面する人口動態の変化と、それが産業や企業経営に与える影響について、多くのデータを交えながら解説が行われました。

内容は決して楽観的なものではありません。しかし、アトキンソン氏のユーモアを交えた語り口に会場から笑いが起こる場面もあり、参加者は終始真剣な表情で耳を傾けていました。

講演終了後の祝賀会でも、講演内容や感想が各所で話題となっており、多くの参加者の印象に残る講演であったことがうかがえました。

 

人口構造の変化がもたらす現実

講演の中で繰り返し示されたのは、日本がこれまで経験したことのない人口構造の変化です。アトキンソン氏は、国内のビールや米の消費減少を例に挙げ、それは単なる嗜好の変化ではなく、消費を支える世代そのものが減少していることが大きな要因であると指摘しました。また、総人口の減少だけでなく、生産年齢人口の減少と高齢化の進行が同時に進んでいる現状についても、多くのデータをもとに解説。今後は消費者数の増加や労働力の確保を前提とした経営が難しくなる中で、人口増加時代の常識や成功体験を見直す必要性が示されました。石材業界においても市場環境の変化は避けられません。こうした現実を正しく認識した上で、自社の価値や役割を改めて考えることの重要性が伝えられました。

 

生産性向上と価値創造

人口減少や市場縮小が進む中で、業界を持続可能なものとしていくためには、一社一社が労働生産性を高め、付加価値を向上させていくことが重要になります。講演では、思い込みや慣習ではなく、データや事実をもとに現状を把握することの重要性についても触れられました。また、自社が提供している価値とは何か、本当に顧客が求めているものは何かを見つめ直すことの大切さにも言及がありました。人口増加を前提とした時代から、人口減少を前提とした時代へ。その変化を踏まえながら、これからの経営のあり方を考える機会となりました。

 

受講者アンケートにみる気づき

講演後のアンケートでは、「人口動態の変化について改めて危機感を持った」「数字に基づく説明が分かりやすかった」「石材業界の将来を考える上で参考になった」といった声が多く寄せられました。また、「人口減少を前提に考える必要性を再認識した」「現状を見直すきっかけになった」「やるべきことの再確認になった」など、自社の経営や今後の方向性について考える機会になったという感想も目立ちました。数字やデータを通じて現実を見つめ直し、将来への備えについて考える。今回の講演は、そのような気づきを得る場となったようです。

 

価値創造委員会が目指すもの

価値創造委員会の役割は、正解を一方的に示すことではありません。今回の講演のように、業界が直面する課題について考えるきっかけを提供し、会員の皆様が将来を見据えるための共通基盤をつくることにあります。人口減少や担い手不足など、石材業界を取り巻く環境は今後も大きく変化していくことが予想されます。委員会では今後も、客観的なデータや多様な視点を共有しながら、業界全体の足元を照らす「未来への応援団」として活動を続けてまいります。今回の講演が、それぞれの立場で未来を考える一つのきっかけとなれば幸いです。

[価値創造委員会 委員長 佐藤 周一郎]

 

(オマケ:運営スタッフの裏側)

 

(アトキンソン氏と記念撮影)